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平成23年度プロジェクト研究報告


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東日本震災復興プロジェクト

【研究代表者】原慶太郎
【研究分担者】富田瑞樹、伊藤敏朗

本プロジェクトは、東日本大震災の被災状況の把握や、今後の復旧・復興・再建に、本学としてどのようにかかわることができるのか、実際に現地に足を運び、現地のニーズと本学のシーズを検証し、次年度以降の活動につなげることを目的としている。対象地を宮城県沿岸部と千葉市香取市佐原地区の被災地に設定し、予察的な調査を踏まえ、具体的な調査研究を実施した。

1. 宮城県沿岸域被災状況調査
広域的調査として、2011年9月に宮城県北部の南三陸町(志津川)から女川、石巻、松島を経て仙台湾岸までを、海岸植生の専門家である鹿島建設技術研究所の高山晴夫博士とともに踏査し、被災状況を調査した。写真は志津川大島の被災前と後の写真である。コンクリートの鳥居や金属の柵が破壊されるほどの営力が加わったことが分かる。ただし、海崖の植生は物理的な岩石の破砕部以外は大きな変化は見られず、島嶼のタブノキ林もほとんど影響は認められなかった。
詳細な調査区を、仙台市宮城野区南蒲生地区に設定した。当地は、伊達政宗の時代から造林されたマツ林が大津波を受け、奇跡的に「櫛の歯状」に残存した一角である。ここに540m×40mのコアエリア調査区を設定し、微地形測量と、樹木の精確な位置図を作成した。続いて、津波による樹木の損傷状況を明らかにし、立地との関係を解析した。低地盤・後背湿地域では地下水位が高く、根系の鉛直方向への成長が阻害されるだけでなく、地震直後に液状化が生じたと推察される。内陸側林分における根返りや流亡個体の多発には、微細な立地の差異が影響しているようであり、より詳細な調査を継続する予定である。

図1.震災前の南三陸町志津川荒島
(2004年5月16日 原正利氏撮影)

図2.震災後の荒島
コンクリート製の鳥居や金属製の柵が破壊されているが、島上のタブノキ林などはほとんど影響がなかったことが窺える(2011年9月15日)

図3.南蒲生におけるマツ林の状況と調査風景

2.佐原復興観光ドキュメント番組の制作
東日本大震災で甚大な被害を受けた千葉県香取市佐原の住民たちが、復興観光に取り組んでいる姿を、情報文化学科学生(当時)の松崎真澄とともに映像ドキュメンタリー番組として記録した。佐原は、旧い町並みの保存・修景によって、近年、多くの観光客が訪れるようになり、まちおこしの成功例として全国に知られるようになった矢先、東日本大震災に見舞われた。番組では、震災前(2005年)に撮影された美しい佐原のまちなみの紹介から始まり、震災当日の映像、そしてその後の佐原のまちで復旧・復興にとりくむ住民たちのインタビューを重ね、同年の佐原の大祭(国指定重要無形民俗文化財)を無事に開催して、佐原に活気が戻る場面までを、撮影・編集してまとめた。本編15分の記録映像のDVDを制作したほか、のべ4時間超となった住民へのインタビューの素材映像のDVDもあわせて制作し、その内容の全文を書き起こしたテキストデータも作成し、「プラットフォーム佐原」(佐原商工会議所内)に寄贈した。

図4.佐原での取材風景(右が松崎真澄君)

図5.佐原での市民への聞き取り調査

3.成果
<宮城県沿岸域>富田瑞樹・鴇田朋允・平吹喜彦・菅野洋・斎藤綾子・原慶太郎(2012)東日本大震災による津波が仙台湾海岸林の構造に与えた影響. 日本生態学会第59回全国大会,大津.
<香取市佐原>平成23年度千葉県メディア・コンクール(主催:千葉県教育委員会)」最優秀賞・千葉県教育委員会委員長賞.

タブレット端末・ソーシャルメディア展開プロジェクト

【研究代表者】永井保夫
【研究分担者】大城正典、山口崇志、花田真樹、井関文一、関山絢子、ケビン・ショート、安岡広志

(1)「急速な普及が進んでいる、携帯タブレットやスマートフォンなどの高性能な個人用計算端末機を有効に学習/教育活動に活用する教育の情報化」

a. 携帯端末を用いた双方向授業支援システムに関する研究 (山口、花田)
本研究では、学生の理解度と質問やトラブルの発生状況を集計し、講師とTA・SAが携帯するタブレット端末上で見える化する双方向授業支援システムについて検討をおこなった。本システムは、受講生の能動的な質問を容易にするようWebインターフェイスを導入し、収集した質問と対応状況を講師とTA・SAが携帯するタブレット端末上で共有および可視化するシステムである。昨年度末より学部生を中心として設計・開発を開始を行っており、今年度4月より複数の科目でテスト運用を開始している。今後、これらの運用結果を集計・評価し、以下の会議において成果を発表し論文化を進める予定である。

b. 携帯端末を用いたデータ入力インターフェイスおよび収集技術に関する研究 (山口)
folksonomyによる画像分類を例に、携帯端末向けユーザインターフェイスと分類手法の適応を検討した。本研究では、ユーザによるタグ付与型の分類手法ではなく、ユーザにより一組の画像と画像に対する類似性をyes/noで付与する方式を用い、クラスタリング手法を応用することで半自動的に分類を得る手法を提案した。現在、システムの開発を進めると共に、従来のタグ付与型画像分類や画像のクラスタリング等とは、データ構造が異なる為、新たに評価用のデータセットを作成している。また、別途データセット作成の為のシステム開発も進めている。提案するシステムの開発は5月中に終了し、評価をした後、下記の会議における成果発表を経て論文化を進める予定である。

c. 携帯端末上での学習/教育活動支援コンテンツに関する研究 (永井、大城)
オブジェクト指向プログラミングの教育において、クラス定義や動作の様子を視覚化して学習者に提示することが,学習者の理解を深めるのに有効であると考え、Java 言語によって書かれたソースプログラム内に定義されたクラスとそのメンバを視覚化し,またプログラムの動作の様子を視覚化する教育支援システムを提案し、タブレット端末での利用について検討した。さらに、タブレット端末上での加速度センサーなどを利用したゲームを題材として、タブレット端末でのプログラミングの学習方式についても検討した。

(2)「ウォーキングマップの情報化」(井関、関山、ケビン、安岡)
印旛沼・里山ウォーキングマップ(千葉県県土整備部河川環境課発行)を参照して、独自に3つのウォーキングコースの作成をおこなった(印旛沼ウォーキングマップ)。ウォーキングコースは、Google mapやOpen street mapなど、インターネット上で利用できるGISソフトで表示できる環境を整備した(佐倉のカントリーハイクvol1-1)。また、ウォーキングマップの3次元仮想空間内での再現については、3次元データを Collada形式に変換して Web上に表示する方法を試みているが、これについてはまだ開発途中である。

【成果】
電子情報通信学会教育工学研究会2012-03-ET, 第37回 教育システム情報学会第37回全国大会 (2012年8月22日~24日),
平成24年度 教育改革ICT戦略大会 (2012年9月6日), 佐倉のカントリーハイクvol1-1, 印旛沼ウォーキングマップ

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情報ミュージアムプロジェクト

【研究代表者】小泉 宣夫
【研究分担者】小宮山 隆、吉田 彰、マッキン ケネス・ジェームス、櫻井 尚子、伊藤 敏朗、西貝 雅人(順不同)

情報のかたち~Augmented Museum~

1.プロジェクトの概要 “情報のかたち”オーグメンテッド・ミュージアム
情報技術の発展を支えてきた様々な機器を集めて展示するとともに、それらの技術的解説やユーザーの関わりをWEB上で展開し、人工物への理解を情報技術の補助によって深める仕組みを提供する。
2.本年度の実績
2.1展示スペースの設営:
1号館ロビー、ならびに4号館メディアデザインルームの前にそれぞれ展示ケースを2台設置し、以下に述べる情報関連機器を展示公開した。

4号館での展示例

2.2 メディア機器の変遷
映像機器(カメラ、ビデオカメラ、プロジェクター)、音響機器(テープレコーダー、レコードプレイヤー、MIDI音源、発振回路等の電子実験セット)、テキスト情報に関してはタイプライター等を一個人の所有物を中心に展示し、メディア機器の発展がわかるようにした。現在4号館の展示スペースにて公開している。
2.3 小型情報端末、パソコンの変遷
PDA等の小型情報端末、ならびにMSX、マッキントッシュ等の初期のパソコンを展示し、パソコンの発展の状況がわかるようにした。1号館で公開しているが、一時的に千葉ステーションキャンパスにおいて公開している。

準備中のWebページ

2.4 本学情報サービス環境の変遷
本学の情報教育環境の変遷がわかるように、関連する資料を整理した。現在1号館でその一部を公開している。

2.5 Webページの準備
メディア機器関連の展示物については詳しい解説を載せたWebページを作成した。QRコード等により、展示品とのリンクを現在準備中である。

2.6 AR技術を用いた展示方法の検討
展示品を参照すると携帯端末により関連した立体映像が見えるなど、陳列状態とは異なる視点からの画像や情報をAR(オーグメンテッドリアリティ)の技術を用いて提供する方法を検討中である。

クラウドサービスを活用した携帯情報端末による介護事業所の情報管理に関する研究

【研究代表者】三宅 修平
【研究分担者】吉澤 康介、池田 幸代、樋口 大輔

1. 研究報告
 介護サービス事業者における情報マネジメントの特徴を分析し、コストを抑制した情報システム導入による業務効率化の可能性を探った。
 近年の民間の介護サービス事業者にとって、業務効率化への圧力と、サービスの多角化への圧力は強い。これらを実現するためには、事業組織における情報マネジメントを見直すことによる業務の効率化と、情報共有を進めることなどによる新たなサービスの開発が求められる。
 本研究では、東京都内で介護事業所を展開する事業者を事例として、介護サービス事業者における情報マネジメントの実態を明らかにし、それに基づいて、業務効率化と新サービス開発をにらんだ情報システムの提案を行った。
 具体的には、タブレット端末と、クラウド上のオンラインストレージサービスに着目した。オンラインストレージサービスとは、インターネット上でファイル保管用のディスクスペースにデータを保存することができるサービスのことであり、最近では、同種のサービスの中には安価で使いやすいインタフェースを実装しているものも出現している。また、タブレット端末の高性能化、低価格化も顕著であり、情報機器の操作に長けていない人でも活用できる状況にある。
 これらを組み合わせて、ケアプランを中心とする介護サービスのコア情報(図1)をクラウドに登録し、タブレット端末を通じて「いつでも、どこでも」参照、変更できるシステムを開発した。このシステムを、2012年3月、研究に協力頂いている介護サービス事業者に提供し、システムの講習(写真1)やヒアリングを実施した。

図1 介護サービス事業者のコア業務のフローの例

写真1 講習会の風景(事業所職員によるタブレットの操作テスト)

 その結果、次のような示唆が得られた。すなわち、適切な情報マネジメントによって職員間の情報共有が図られ、状況特殊性に応じたカスタマイズが行われれば、業務の効率化を実現することが可能である。そのためには、高度なICT基盤があることは望ましいが、安全性の高いオンラインストレージとタブレットのようなモバイル端末の利用でも基本的な業務の効率化は達成できる。

2. 成果の公表
池田幸代・樋口大輔・吉澤康介, "介護サービス事業における情報マネジメントとICT導入の試み", 東京情報大学研究論集第16巻第1号pp.87-107, 2012