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『東アジアには「生きた化石」が気候変動を生き延びられる安定した逃避場所があった』本学准教授が参加する国際研究グループの研究成果がNature Communicationsに掲載されました


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平成30年10月26日
国立大学法人 千葉大学
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
学校法人東京農業大学 東京情報大

東アジアには「生きた化石」が気候変動を生き延びられる安定した逃避場所があった

 東アジアには、イチョウやメタセコイア、コウヤマキ、カツラといった、「生きた化石」とも呼ばれる、古第三紀・新第三紀(約6600~260万年前)や、それよりも古い時代の北半球に分布を広げていた植物(以下、遺存植物)が数多く生き残っています。しかし、これらの植物が、どのような生態学的・気候学的な条件の地域で生き延びてきたのかは明らかになっていませんでした。
 雲南大学のCindy Q. Tang教授、森林総合研究所国際連携・気候変動研究拠点の松井 哲哉室長と大橋 春香特別研究員、千葉大学大学院園芸学研究科百原 新教授、東京情報大学総合情報学部富田 瑞樹准教授が参加する国際研究グループは、遺存植物の現在の分布情報を収集し、地図上で可視化しました。その結果、中国南西部~ベトナム北部から日本中部にかけての湿潤な亜熱帯・暖温帯域を中心に、遺存植物が分布していることが明らかになりました。さらに、中国南西部~ベトナム北部は、第四紀(約260万年前以降)の気候変動下でも、遺存植物の生育にとって安定した逃避場所となっていた可能性が高いことが初めて示されました。また、将来の気候変動による影響を予測したところ、中国南西部を中心とする東アジアの亜熱帯・暖温帯域が遺存植物の逃避場所として機能し、保全上重要な地域であることが示されました。

本研究の成果はNature Communications にて、日本時間2018年10月26日(金)18時にオンライン公開されました。 (https://doi.org/10.1038/s41467-018-06837-3)
論文:Identifying long-term stable refugia for relict plant species in East Asia
著者:C. Q. Tang, T. Matsui, H. Ohashi, Y-F Dong, A. Momohara, …, Y. Yang, …, M. Tomitaほか

背景

 アジア大陸東部は、第四紀にヨーロッパや北米のように氷床で覆われておらず、第四紀より前から生育していた多くの植物が生き残った場所でした。研究グループは、東アジアにおける遺存植物の多様性は気候変動に対する避難場所が存在することによって形成されてきた、と仮説を立て、遺存植物の種の豊富さの空間的分布パターンについて分析を行いました。

内容

 本研究では、133属443種の遺存植物の分布情報を東アジアの各国(中国、日本、韓国、ロシア極東、モンゴル、東・中央ヒマラヤ、インド亜大陸・スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア)から広域的に収集しました。また、このうち十分な数の分布情報を得られた383種については、生態ニッチモデル*を構築し、さらなる分析を行いました。構築した生態ニッチモデルを用いて最終氷期最寒冷期(Last glacial maximum, 約22,000年前)および完新世中期(Mid-Holocene, 約6,000年前)における遺存植物の生育適地を推定したところ、中国南西部~ベトナム北部の地域では、最終氷期にも、生育に適した気候が安定的に維持されていたことが示されました。また、将来の気候変動による影響を予測したところ、中国南西部を中心とする東アジアの亜熱帯・暖温帯域は将来の気候変動に対しても、遺存植物の逃避場所として機能することが示されました。このように、将来にわたって多様な生物の避難場所となりうる地域を特定することは、気候変動下で生物多様性を維持するための適応策を実施するうえでも、重要な情報となります。

*生態ニッチモデル:生物種の現在の生息地点と気温・降水量などの環境因子から、当該生物種の生息適地の存在確率を推定する手法

A,イチョウの葉; B,イチョウの自生地(重慶市南川区):
C,メタセコイアの葉; D,メタセコイアの自生地(湖北省利川市)。
Tang et al. (2018)より引用。

遺存植物のうち東アジア固有属の確認種数。水色の線は夏季モンスーン(湿潤気候)の限界。Tang et al. (2018)より引用。

【研究に関するお問い合わせ】

千葉大学園芸学研究科 教授 百原 新
森林総合研究所国際連携・気候変動研究拠点 室長 松井哲哉 
東京情報大学総合情報学部 准教授 富田瑞樹


【取材に関するお問い合わせ】

千葉大学企画総務部渉外企画課広報室
電話:043-290-2232 メール:bag2018(at)office.chiba-u.jp

森林総合研究所企画部広報普及科広報係
電話:029-829-8372 メール:kouho(at)ffpri.affrc.go.jp

東京情報大学総務課
電話:043-236-4603 メール:syomuka(at)affrs.tuis.ac.jp

関連資料(プレスリリース本文)