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【東京情報大学】認知症高齢者の表情から感情を定量的に測定し介護現場におけるコミュニケーションロボットの効果検証を実施


□概要
 東京情報大学(設置者:学校法人東京農業大学)総合情報学部の池田幸代准教授、小早川睦貴准教授、山口豊教授による「介護現場におけるロボット導入の効果と課題についての事例研究」で、認知症高齢者の表情から感情を定量的に測定することで、コミュニケーションロボットの効果を検証しました。

□研究の背景と目的
 介護施設において人手不足が深刻化する中、コミュニケーションロボットの活用が注目されています。東京情報大学の研究チームは、東京都荒川区の小規模多機能型居宅介護施設と連携し、特に「午後のお茶からお迎えまでの人手が薄くなる時間帯」に着目。認知症高齢者を含む利用者のQOL向上とスタッフの負担軽減を両立できるロボット運用方法を探りました。使用されたのはコミュニケーションロボット「LOVOT」。本研究では、ロボット単独での効果だけでなく、スタッフや他利用者が関与する場合の効果の違いを明らかにすることを目指しました。

□研究方法
対象
利用者:男性4名(69〜88歳、認知症含む)
スタッフ:9名
実施時期:2022年9月(利用者調査)、2023年2月(スタッフ面接)

方法
利用者の感情変化を客観的に捉えるため、Affdex技術を搭載した株式会社CAC identityの表情感情解析アプリ「心sensor」を採用しました。心sensorは感情認識AI技術(FACS理論ベース)により、21種類の表情、7種類の感情、2種類の特殊指標をリアルタイムで数値化します。研究ではこのうち、6つの基本感情(喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖、驚き)を分析対象としました。

測定条件
ロボットなし(通常時)
ロボットのみとの交流
ロボット + 第三者(スタッフ等)の関与あり

活用された主要指標
「喜び」の持続性:平均値20以上を「持続的な強い感情」と定義し、各条件下での出現パターンを比較
感情変化のタイミング:ロボットを抱く瞬間、第三者が話しかける場面など、特定行動と感情スコアの関連を分析
個人差の可視化:被験者ごとの感情プロファイルを作成し、ロボットへの反応の多様性を把握

研究結果
定量分析: 感情認識AIによる感情測定
「心sensor」の測定結果から、以下の知見が得られました。ロボット単独では効果が限定的だった被験者でも、第三者が介在することで「喜び」が増幅されたことが分かりました。
No条件:被験者dに「喜び」の持続
LOVOT条件:被験者aに「喜び」、被験者cに「悲しみ」
LOVOT + 第三者条件:a、c、dの3名に「喜び」が持続的に出現

定性分析:スタッフの観察
スタッフ9名中7名が「ロボットありの方が利用者にポジティブな影響がある」と回答。具体的な観察例として、「普段笑わない方が笑顔を見せた」「可動域が狭い腕を伸ばしてロボットに触ろうとした」といった行動変化が報告されました。

運用面の課題
メリットとして健康増進への期待やサービス向上が挙げられた一方、デメリットとして重量・転倒リスク・充電の手間・利用者特性とのミスマッチが指摘されました。

研究の意義と感情認識AI活用のメリット
学術的意義
本研究は、ロボット単体ではなく「第三者との三項関係的コミュニケーション」が感情的効果を高めることを実証しました。これは模倣理論(Dautenhahn & Billard)や受動的観察によるロボットの「自発的人間化(Spontaneous Humanization)」(Spatola & Cherif)と整合し、介護ロボット導入において人的介入の重要性を裏付けています。

感情認識AI活用の実践的メリット
1.主観に頼らない客観評価:認知症高齢者は言語での感情表現が困難な場合がありますが、今回分析に活用した心sensorでは、被験者の表情を動画として記録し、それをもとに自動的に感情を数値化するため、本人の負担なく効果測定が可能です。

2.リアルタイムな感情変化の把握:どのタイミングで喜びが生まれるかを特定できるため、より効果的な関わり方の設計に直結します。本研究では「第三者がロボットに話しかける瞬間」が重要であることを発見しました。

3.個人差の可視化:同じロボットでも利用者によって反応が異なることを定量的に示せるため、個別ケアプランの設計に役立ちます。

4.倫理的配慮との両立:非侵襲的な測定方法のため、高齢者への負担を最小限に抑えながら継続的なモニタリングが実現できます。

今後の展望
研究チームは、性格・ペット飼育歴・子育て経験などの個人要因とロボットとの関係性をさらに深く分析する必要性を指摘しています。感情認識AIのような客観的測定技術は、こうした個別最適化されたケアの実現において、不可欠なツールとなります。

介護現場におけるテクノロジー活用は、単なる省力化ではなく、利用者一人ひとりのQOL向上という本質的な目的に向かって進化しています。本研究は、感情測定技術がその実現にどう貢献できるかを示す重要な一歩となりました。
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