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平成27年度プロジェクト研究報告


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プロジェクトさわら

【研究代表者】堂下浩
【研究分担者】河野義広

 本プロジェクトは香取市民及び行政関係者の協力を得て、平成28年度においても実施された。その研究活動を本報告書では2部構成として、以下の通り報告する。

Ⅰ部 東京情報大学による研究活動の成果報告

1.プロジェクトの目的
本研究の目的は、佐原の街が今後100年、200年、それ以後と続いていくための持続可能な地域社会の体制作り、市民同士の絆作り、そして佐原の歴史遺産の再認識とPRを通した地方創生にある。そのためには、市民一人ひとりが自分の街の歴史や文化、そこに住む人々や地域産業を理解し、積極的な情報発信により、人々の共感を得ることが大切と考える。そこで本研究では平成27年度において、以下の2つのプロジェクトを実行した。

プロジェクト①:ソーシャルメディアを活用した地域社会と絆作り
佐原の街の情報を蓄積し発信していくWebメディア『佐原ソーシャルライブラリ』の設計・開発・運用を行う。佐原ソーシャルライブラリとは佐原の街の持続可能な地域社会と絆作りを目的とし、佐原の街の情報を収集・蓄積しながら成長していくメディアである。

プロジェクト②:香取市内における産業遺産の発掘とPRビデオの作成
香取市内の佐原や小見川は古くは平安時代から戦前まで関東圏における物流機能の中核都市として発展してきた地域である。一方で盛んな物流を支えるための金融機能も集積・繁栄してきた歴史的事実もある。そこで本プロジェクトでは今日注目される産業遺産を「銀行」という切り口で発掘し、佐原や小見川の産業遺産として動画に記録し、かつ広く地域振興のためにPRすることを目的とする。

2.研究組織
研究代表者: 堂下浩
研究分担者: 河野義広(プロジェクト①を担当)、堂下浩(プロジェクト②を担当)

3.プロジェクトの実施内容
3-1.  プロジェクト①:ソーシャルメディアを活用した地域社会と絆作り
<佐原ソーシャルライブラリ http://sawara-social.tuis.ac.jp> 
平成26年度の活動結果と佐原ソーシャルライブラリのプロトタイプを踏まえ、佐原ソーシャルライブラリの運用を開始した(図3-1)。佐原ソーシャルライブラリでは、佐原の大祭(夏祭り、秋祭り)の様子や盆ふぇすたin佐原2015での準備作業、月1開催のIT相談コーナーなどの活動記録を中心に、プロジェクト参加学生4名、教員1名が分担して記事執筆を行った。主な活動記録と記事の投稿数は以下のとおりである。
◆IT相談コーナー:9件
 ・月1開催で佐原町並み交流館の1室を借りて実施
 ・佐原の町並みやITに関する相談内容を記録
◆佐原の大祭(夏祭り、秋祭り):8件
 ・大祭の写真や動画
 ・システム(佐原ハンターズ、さわら飲み歩きマップ)の紹介、更新
 ・佐原ハッカソン2015の開催
◆盆ふぇすたin佐原2015:6件
 ・竹あかり演出家のちかけんさん協力のもと竹細工ワークショップの実施
 ・盆ふぇすたでの灯籠流しや竹あかりの写真
◆TUIS cafe:3件
 ・起業・商品開発コースが開発した「いちじくタルト」の取材記事
◆その他:4件
 ・イベント告知、サイト更新、前年度の成果報告など

佐原ソーシャルライブラリの平成27年度の総ページビューは8555であり、特に夏期の7月から10月の平均月間ページビューは1230であった。大祭を中心に夏のイベントが多く、更新頻度が高かったことが寄与したと考えられる(表1)。一方、アクセスユーザの地域分布を見ると、千葉市が全体の27.25%で1位、次いで新宿区11.32%、港区9.52%、横浜市5.96%、名古屋市4.21%と続く。これらは本学関係者やFacebookに拡散した結果と見られ、香取市外で少しずつ認知されつつあることが分かった。なお、香取市内からのアクセスは、全体の1.55%で11位であった。

<IT相談コーナー>
 佐原の人々との交流、ITスキルの向上、IT活用における課題の抽出を目的として、佐原町並み交流館にて「IT相談コーナー」を定期的に開催した。2015年6月に初回のIT相談コーナーを開催し、毎月第4金曜日に計9計開催した。各回の相談者数、主な相談内容を表2に示す。各回ともに相談者は少数であったが、PCの写真やフォルダの整理といった初歩的な内容からスマホやiPadの活用方法、WordPressによるWebサイト構築など、幅広い内容の質問に応えることができた。

<佐原ハッカソン2015>
 佐原の大祭(秋祭り:10/9~10/11)の際に、合宿型開発イベント「佐原ハッカソン2015」を開催した。佐原ハッカソン2014で開発した「佐原ソーシャルライブラリ」、「さわら飲み歩きマップ」の改修・更新を行った(図3-2)。
 また、香取市からの要望を受け、大祭時の山車の位置情報を把握するためのWebシステムとGPSの精度を検証した。平成27度の大祭において、香取市はGPS端末を山車に搭載し、それらの位置情報を提示するアプリを提供した。しかしながら、そのアプリを提供し続けるためには毎年ランニングコストが発生するため、既存のGPS端末と内製システムで代替できるか検証を行った。その結果、GPS端末の測位精度やバッテリは、既存技術である程度解決できるため、利用者にとって使いやすいアプリを提供できるかが課題となる。

3-2.プロジェクト②:香取市内における産業遺産の発掘とPRビデオの作成
3-2-1 研究の意義
研究担当者のゼミナールでは金融論に関する研究活動を行っている。平成27年度のゼミナールでは、明治から大正にかけて日本には数多くの銀行が存在し、殖産興業の一翼を担っていたにも拘らず、銀行の数は関東大震災から昭和恐慌までの時期を経た後、日中戦争から始まる戦時期において著しい減少傾向を示した点に着目し、一部の学生が中心となり、その影響について研究プロジェクトを実施した。戦後、銀行界に対する「護送船団方式」と呼ばれる金融行政を通して、日本は中央集権的な産業政策の下で高度成長を奇跡的に遂げたと言われる。しかしながら、日本経済が低成長期に入り産業のサービス化が進展したことで、重厚長大産業に代表される中央集権的な産業構造に依存していた地方都市は産業の空洞化に陥り、地域経済を衰退させる事態を招いた可能性は否定できない。そこでゼミの当該研究グループは経済の成熟期を迎えながらも地方経済が活況を呈するイタリアと異なり、日本が国際競争力を有する中小企業群を地域に育成することができなかった理由として戦時期の統制経済策に注目し、実際の地方都市を調べることでその実態解明に努めた。今回、具体的に香取市の地域経済を歴史的側面から調査対象として取り上げ、学生のグループが中心となり銀行機能と地域経済の関係について研究を行った。

3-2-2 戦時体制下で進められた千葉県内での銀行統合
現在、日本の銀行数は外国銀行を除くと117行(2014年末現在)である。1920(大正9)年の戦後恐慌に見舞われる以前、日本には2,344行もの銀行が存在していた。1930年代後半には日本の産業界は活況を取り戻したが、その後も銀行の統合は統制経済を志向する大蔵省、日本銀行、軍部によって一層強化された。戦時統制下で政府が銀行合同を強力に推し進めたが、千葉県も例外でなかった。「千葉銀行史」(1975)によると、千葉県では政府が戦争目的遂行という国策を掲げて、銀行の統合に強引な干渉が行われた事実が記載されている。
そこで今回、かつて栄えていた香取市内の佐原及び小見川地域が本論文の事例研究の対象地域と考え、学生グループは調査を行った。実際に現地へと赴き、行政機関や図書館にて資料を収集するとともに、現地の産業史に詳しい郷土史家や商工関係者にインタビュー調査を精力的に行い、戦時体制下で進められた千葉県内での銀行統合策がその後の地域経済に与えた影響を調べた。

3-2-3 事例研究(香取市における銀行機能の歴史と地域経済の関連性に関する調査)
かつて佐原及び小見川といった地域では、醤油・酒・味噌といった醸造業や軽工業が盛んに行われていた。これらの品を運ぶ手段として利根川を利用した水運業が明治期まで栄え、その後も物流拠点として整備されていた。両地域では、佐原には小野川、小見川には黒部川といった河川があり、それら河川の沿岸部は商業の集積地となって当時の地域経済の発展基盤として機能していた。これら地域に根差した産業界に融資していた金融機能が佐原興業銀行と小見川農商銀行であった。特に戦前の数ある地方銀行のなかで、県内の有力かつ優良な中堅銀行として経営的に確固たる地位を獲得していた小見川農商銀行は小見川の地域経済を象徴する存在であった。しかし、これら銀行は戦時体制が強まる昭和初期に現在の千葉銀行に次々と合併されてしまった。地元に根差した銀行がその地から消滅したことや、統制経済下で広く統制品目が指定されたことで醸造業や製紙業といった地元の軽工業者は大きなダメージを被った。
とりわけ、資産規模は小さいながら、健全な資産内容で地域経済に貢献してきた小見川農商銀行が1943(昭和18)年に千葉銀行への実質的な吸収合併を強いられたことは、小見川におけるその後の地域経済に多大なる影響を及ぼした。学生らの研究グループは小見川農商銀行の本店所在地の跡地を探索したものの、当初は中々見つけることができなかった。最終的には地元郷土史家へのインタビュー調査によりその跡地を特定できたものの、現在の跡地から往時の賑わいを想像することは決して容易ではなかった。インタビューに協力した地元郷土史家によると、小見川農商銀行が消滅した時期が地元経済の衰退の始まりであったと言う。銀行の本店機能の存在は単に物理的・経済的な意味だけでなく、地域の社会に与える心理的影響面でも無視できない存在である。
また香取市の事例が他の地域でも当てはまるか否かを検証するために、学生による研究グループは戦争中まで優良な中堅銀行の本店が存在していた県内の東金市(東金銀行の事例)と野田市(野田商誘銀行の事例)についても調査を行った。その結果、香取市内と同様の事態が両地域でも起きていた事実を確認できた。

4.プロジェクトの成果(結論)
プロジェクト①「ソーシャルメディアを活用した地域社会と絆作りでは、佐原ソーシャルライブラリの運用管理、大祭をはじめとするイベントの参加、佐原ハッカソンを通じて、学生のWebサイト運用スキル、文章能力、対人関係、地域との人脈作り、Web開発技術など、多方面での能力向上が見られた。しかしながら、3年生は平日授業があるため、現地での活動は限定的となってしまった(3年生の佐原訪問は、5月~10月に掛けて計6回)。そのため、実際の活動記録が少なく記事数が伸び悩んだこと、イベントの準備や記事に注力したためシステム開発コースであるにも関わらず、開発スキルがそれほど向上しなかったことが懸念される。開発スキルの向上について、今後の改善が必要と考える。
研究面では、香取市の方々(主に市民活動団体)のITスキルを向上させ、自ら情報発信できる能力を養うことを目的としていたが、香取市の方々に対する動機付け、協力体制の確立に課題があり、目的を達成することはできなかった。香取市関係者は比較的年配の方々が多いこともあり、ソーシャルメディアを活用した情報発信にあまり積極的ではないように見受けられた。香取市の方々に対し、情報発信の意義やITを学ぶ姿勢を醸成させるための動機付けが必要であると論定される。
また、プロジェクト②「香取市内における産業遺産の発掘とPRビデオの作成」では、学生らの研究グループが香取市内の産業遺産として、かつて地域経済の中枢として機能していた銀行の本店跡地を辿りながら、これら銀行が当時取り引きしていた地元の産業について調査した。具体的には先述した通り、文献調査に留まらず地元の商工関係者や郷土史家とのインタビューを通じて進められた調査過程と研究結果は動画として、産業遺産の記録という観点から作成された。ただし、作品は前編と後編に分かれるが、昨年度の段階で動画として完成し、公開されている作品は前編だけである。前編は「さわらプロジェクト前編 佐原地域における銀行業の盛衰」というタイトルでYouTubeに投稿され、その視聴は可能である(図4-1)。

今後、後編作品を完成させ公開させるとともに、既に公開されている前編作品に散見される誤植等を修正するなど完成度を高めた作品に仕上げる。特に佐原三菱館を取り上げる後編については、佐原支店を開業した川崎銀行の足跡を調べるところから始めるため、その完成までには今年度一杯までの時間を有するであろう。何れにしても、学生グループが普段勉強する教科書という活字による学習から離れ、県内の地元地域でフィールド調査を進めることで、金融に関する知識の幅を広げるだけでなく、現場での地道な調査を通じてマネジメント力やコミュニケーション力を高める学習の機会が提供された点は意義深い。今後とも一定の専門知識を習得した学生を実地調査に出向かせ、地域社会の魅力を高めるための活動に寄与させていきたい。
                                            (文責:東京情報大学)

Ⅱ部 香取市による行政施策的側面からの評価

伊能忠敬と榎本武揚の歴史的なつながりを大切に発展的に継承し、「情報」を活用した新しい未来を切り拓く人材育成と市民協働によるまちづくりの推進に取り組み、市や地域住民、大学双方の有益となるよう連携・協力するため、平成24年11月26日に地域連携協定を締結しました。
以来、市民協働によるまちづくりの推進及び大学の教育・研究活動の充実を図るため、香取市をフィールドとして持続可能な地域・市民一体型のまちづくりの研究及び情報の専門家である大学関係者との市民交流を実施し、市を広くPRするための効果的な情報の発信方法や技術について、『プロジェクトさわら』として大学の研究成果を地域振興に役立てることができ感謝しております。

1.『佐原ソーシャルライブラリ』
 平成27年度においては、小江戸佐原の情報を蓄積し発信していくWebメディア『佐原ソーシャルライブラリ』の設計・開発を行い、運用を開始されまして「佐原の大祭」での山車の位置情報や「盆ふぇすたin佐原2015」の状況を掲載、TUIScafeでは起業・商品開発コースが開発した「いちじくタルト」の取材記事を掲載するなど市内外への情報発信に寄与され、今後も継続した活動をお願いいたします。
また、「水郷佐原あやめ祭り」や「佐原の大祭夏祭り」など夏季の繁忙期は、アクセス数が増加傾向にありますが、一方、冬季の閑散期における『佐原ソーシャルライブラリ』を活用した情報発信の方策についても今後は検討していきたいと考えます。

2. 『IT相談コーナー』
 『IT相談コーナー』につきましては、市広報紙による開催告知を行いましたが参加者が限られておりました。
しかし、相談の内容につきましては幅広く対応していただき相談者との情報交換や市民との交流が図られ感謝いたします。

3.『香取市内における産業遺産の発掘とPRビデオの作成』
 今年度から新たに取り組まれました『香取市内における産業遺産の発掘とPRビデオの作成』につきましては、かつて醸造業や利根川水運の物流拠点として栄えた地域の経済を支えた金融機能の歴史史実を今後どのように現代に生かし、地域社会の魅力を高めるための活動に寄与されるか期待しております。

4.『佐原いろはカルタマップ』(英語版)
 市民協働によるコミュニティビジネスに関する事業として市民団体である香取市国際交流協会と協働で実施した外国人観光案内用の『佐原いろはカルタマップ』(英語版)を作成し、今後の「東京オリンピック・パラリンピック」の開催や「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産登録により増加を見込む外国人観光客の対応に備えることができました。
今後の活用としては、『佐原いろはカルタマップ』(日本語版)と併せて(英語版)につきましても観光案内所等で配布するほか、『佐原ソーシャルライブラリ』や『香取市ホームページ』での掲載を検討し、広く小江戸佐原の情報を発信していきたと考えます。

今後も『プロジェクトさわら』による継続した地域連携を目指すとともに、貴学で新たに設置される看護学部につきましても地域医療の充実に寄与すると思われますので、地域医療に関する新規事業の創出を期待しております。
                                           (文責:香取市生活経済部)

プロジェクトちば

【研究代表者】マッキン ケネスジェームス(プロジェクト統括)
【研究分担者】
①伊藤敏朗:『千葉市シティセールスビデオ作成事業』
②櫻井尚子、栁田純子、安岡広志、内田治、藤原丈史:『千葉市下田都市農業交流センター(下田農業ふれあい館)を活用した地域の活性化に関する研究』
③樋口大輔、マッキン ケネスジェームス:『子供向けのアントレプレナーシップ教育講座の開催』
④西貝雅人、加納佳代子:『ヒューマン・ヘルスケアの啓発に関する公開講座と写真展を組み合わせたウエルネス分野における先行的地域連携プロジェクト』
⑤河野義広、吉澤康介、今井哲郎、三宅修平:『ソーシャルメディア活用による千葉市花見川区の魅力再発見「花見川どっとcom!」』
⑥堂下浩、樋口大輔、マッキン ケネスジェームス『アントレプレナーシップ教育の可能性調査』
⑦山口豊、吉田斎子、飯島冨美子『市民のためのストレス・マネジメントプログラムの効果についての研究』

1.目的
 2013年7月25日に千葉市と経済分野を中心とした連携協定を締結し、これ以降「プロジェクトちば」は実行された。今年度も継続可能なプロジェクトに関しては、現行の連携協定の内容を一段と高めるために、本学の学内資源を活用した千葉市との連携プロジェクト5本を実施する。また今年度は、平成29年度に設置予定である本学看護学部に関連したウエルネス分野で新規プロジェクト1本を立ち上げる。併せて行政との連携プロジェクトとしての実現可能性と千葉市側の意向を探索するための基礎調査となる新規プロジェクトを心理学分野から1本立ち上げる。これら7本のプロジェクトを本年度内に実施することで、千葉市とさらなる連携強化を目指す。さらに今年度から看護領域における地域貢献の先行実績を築き、千葉市民に対しても本学看護学部設置の計画を広くPRする。

2.情報大による研究・教育的側面からの評価(評価者:東京情報大学)
 実施したプロジェクトの本数は計7本、参加教員はプロジェクト統括者も含めて計18人となった。各プロジェクトにおける実施概要と成果を、個別プロジェクト別にまとめると表1の通り。

3.千葉市による行政施策的側面からの評価(評価者:千葉市)
 平成25年7月に連携協定を締結して、約3年が経とうとしているが、御学との連携が年々、発展し深化していることを感じている。
 平成27年度の連携事業を振り返ると、協定締結当初から取り組んでいる各事業については、堂下教授をはじめ知見豊かで市政にご理解の深い教職員の皆様にご参加いただき、御学と市との相互の信頼関係が十分構築されており、堅調に進化している。また、協定当事者の御学と市のみにとどまらず、引き続き、NPO法人、高校、地元経済人など、地域の関係者を取り込んだ事業となり、一段と深みを増した内容となった。
 特に「中学生のための起業体験講座」では、新たな取り組みとして、下記の3点が特筆される。
 ①これまで、大学近隣の中学校の生徒を参加対象としていたが、27年度より若葉区内の全中学校の生徒を対象とした。
 ②参加生徒が、より主体的に講座へ参加できるよう起業する際の「出資金」として参加費を徴収した。(会社清算に伴い返却を前提としているが)
 ③参加生徒に、会社清算後の利益額に応じて図書券を報酬として配布した。
 これらの取組みにより、事業が広がりを見せるとともに、事後のアンケートでは参加者の高い満足度が得られており、本市のキッズ・アントレプレナーシップ教育の推進事業にとって、大きな成果となった。
 本市では、少子高齢化に歯止めをかけ、人口減少と地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保することを目指し、28年3月「千葉市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略」を策定し地方創生に取り組んでいるが、本市だけでは到底成し得るものではなく、御学を始めとした多様な主体との連携・協働への取り組みの強化が必要となっている。
 今後も従来の取り組みを継続して行うとともに、地方創生の観点からも新規事業の創出について御学と協議し、取り組みの範囲を広げ、各事業をさらに推進したいと考えている。
最後に、本市としては、平成29年度設置の看護学部が、本市の地域医療の充実や地域包括ケアシステムの構築などに寄与し、御学との連携が新たなステージに進むことを期待している。

4.考察
 表1に記載される通り、各プロジェクトとも平成26年度プロジェクトを発展・深化させながら、平成27年度プロジェクトを完遂することができた。
 各プロジェクトでは自治体の担当部局が抱える地域に根差した問題を、学生と教員が主体的に調査・研究することで、一段と当該問題への解決に当たることができた。同時に、参加した学生はプロジェクトのマネジメント力だけでなく、地域住民や行政担当者との度重なる協議を通してコミュニケーション力も高めるなど教育的効果も多大であった。したがって、本プロジェクトは継続的に実施されることで将来的に地域貢献と実学に基づく教育実践を両立させた事業になり得ると論定される。

プロジェクト佐倉「佐倉市における地域資源の発掘と発信」

【研究代表者】原慶太郎
【研究分担者】ケビン・ショート、朴鍾杰、安岡広志

1.プロジェクト概要
 平成27年度に締結した佐倉市との包括的連携協定に基づいたフィージビリスタディとして、佐倉市の地域資源に関する調査を実施した。現在、佐倉市では都市部局が中心となって景観法に基づく景観計画の策定を進めている。市側の要請を受けて、佐倉市における地域資源を景観資源という観点で整理し、自然景観と文化景観に分けてデジタルデータとして整備することを進めた。具体的には自然景観(自然環境の諸要素)と文化景観(文化・歴史的な事物や要素)を対象として、既存資料と現地調査から位置座標をもったGISデータとして格納してマップ上に展開し、佐倉市における地域資源の可視化及び統合的に把握した。
 平成27年度は、佐倉市に関する既存資料を市役所及び市の図書館等から収集し、GIS上に基盤情報として整備すること、及び予察的な現地調査を実施した。
 いずれの資料も位置座標をもたない紙ベースのデータでは、Google Earth及びMapを利用して対象部の位置座標を取得することで地理座標を付与(ジオコーディング)した。既存の地形等のGISデータについては、国土地理院の地理基盤情報ダウンロードサービスからデータを入手した。土地利用データについては、環境省生物多様性センターのデータを利用した。
1)自然景観資源に関しては、佐倉市の地形及び植生に関する情報を国土地理院及び環境省のデータから整備し、さらに佐倉市に生息・生育する動植物種の分布については、2000年に発刊された「佐倉市自然環境調査」から位置座標をもったGISデータとして整備する。
2)文化景観資源については、佐倉市都市部局の都市計画図を用いて土地利用規制を把握し、次に、市のWebページで公開されているデータや市の報告書等を用いて、佐倉市における社寺、道標、文化的施設などについて、位置座標をもったGISデータとして整備する。
3)整備されたGISデータを、基盤となる地図データにオーバーレイして可視化するとともに、今後の景観計画立案に資する利用方策について検討する。

2.成果報告
1)自然景観資源
自然景観の要素として、まず国土地理院のデータに基づいて地形データを作成した。また植生に関しては、環境省第6回自然環境基礎調査に基づく1/25,000植生図から市域だけを取り出して整備した。さらに、野生動植物の分布地点をGISデータとして入力した。
・猛禽類:サシバ、ノスリ、トビ、チュウヒ
・両生類:ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエル、アズマヒキガエル、ニホンアカガエル、ウシガエル
・魚類:タモロコ、モツゴ、ドジョウ、シマドジョウ、ホトケドジョウ、スナヤツメ、オイカワ、カマツカ、タナゴ、ヤリタナゴ、ブルーギル、オオクチバス
・哺乳類:アライグマ、イタチ、ノウサギ

2)文化景観資源
・文化景観の要素として、自然系とデータを共有する土地利用(植生)について整備し、データを収集してGISデータ化した。
・宗教的施設:寺社仏閣、文化財、名木・高木、臼井八景
・公共公益施設:医療・保育、学校、図書館・博物館

3)今後の方針
市側の意向としては、さらにGISデータを追加することと、地形の三次元表示など可視化の検討を依頼されている。

4)参考資料
佐倉市ホームページ
http://www.city.sakura.lg.jp
国土地理院基盤情報ダウンローサービス
http://fgd.gsi.go.jp/download/
生物多様性センター
http://www.biodic.go.jp/trialSystem/shpddl.htm
第4次佐倉市総合計画
佐倉市景観計画(素案)

プロジェクト四街道

【研究代表者】中尾宏
【研究分担者】池田幸代、小早川睦貴、ケビン・ショート、吉田彰、原慶太郎、富田瑞樹、鈴木理枝

2015年7月に締結された四街道市と本学との産業振興分野及びシティーセールス分野における連携に関する協定の一環として、本学の学内資源を活用した四街道市との連携プロジェクト3本(①~③)を実施した。産業振興分野では、①地域食材を活用した商品開発、②自然環境マップ作製など四街道市が期待する地域活性化のための事業、シティーセールス分野では、③外国人観光客の導入施策としての小学生の英語の学びを通じてのコミュニケーション能力向上プログラムを作成し市の魅力発信法の研究を行った。以下にその概要を記す。

①地域食材を活用した商品開発
【研究組織】
 池田 幸代、小早川 睦貴、中尾 宏
【成果報告】
 四街道市の地域資源となる食材を発見し、どのような商品づくりが可能であるかを調査、これをもとに地域の歴史を学び、地域食材である鹿放小麦を用いた菓子「よつどきクッキー」を開発した。具体的にはまず市場調査のために、四街道市の担当部署や地域のステークホルダーである住民へのアンケート調査を実施した。これにより地域住民のニーズであるインサイトを探り、商品・サービス、ビジネスモデルまでを含めた企画を行った。学生から出されたこの製品化企画(コンテンツ)を、市民を含めた地域のステークホルダーを対象にプレゼンテーションし、フィードバックを得た。その後は企画した新商品の実証性を検証し、製品化をすすめた。企画段階から東京農業大学オホーツクキャンパスのご協力をいただき、商品開発の技術的課題および商品価値の創出について情報収集を行った。さらには、食材の健康効果を謳うために包装材への寄稿をいただいた。
 本プロジェクトは近年教育方法として関心が高まっている「プロジェクト学習」に基づいて、本学の実情に合わせた教育プログラムとして池田、中尾両ゼミ生の参画を得て実施した。「プロジェクト学習」は学生自身が目標達成を志向するプロセスにおいて、課題発見力・情報リテラシー・コミュニケーション力・課題解決力を身につけることができるといわれている。一連の取組みは、学生がそれぞれに自己の成長を確認できるように、都度活動内容をポートフォリオにまとめた。本プロジェクトの教育効果については、プロジェクト開始前と終了後に参加した学生を対象に行うアンケート調査をもとに分析をすすめた。アンケートの内容は「社会人力」と「自己の強み」に基づいて作成した。

この取組みにおいては、以下のプロセスで実施した。
2015年 9月:テーマとゴールの設定、調査計画書を作成、オホーツクでのヒアリング調査
2015年10月:地域へのヒアリングによる地域資源の活用シーズおよびニーズの調査
2015年11月:地域のイベントへの参加を通じて地域資源の活用ニーズ調査を実施。
       調査結果の分析とインサイト(真のニーズ)の明確化。
       学生の教育効果評価のための事前アンケートの実施。
2015年12月:製品化企画のアイデア出しと関係者へのプレゼンテーションの実施
2016年1月:製品仕様の決定。包装材・製造調理用具のデザインと発注。試作品の制作
2016年2月:お披露目会の実施とステークホルダーからのフィードバックにより製品を改良
2016年3月:ポートフォリオのまとめ・学生の教育効果評価のための事後アンケートの実施。活動報告書の作成。

今回のプロジェクト研究の成果として、地域との連携による商品開発の仕組みの構築と、地域食材を活用した商品の創出が可能となった。また、学生においても「社会人力」と「自己の強み」の評価項目のうち、いくつかの点において向上した項目があった。このプロジェクト研究を通じて学生の学びに貢献することが可能であると分かった。

②地域活性化のための自然環境マップ作製
【研究組織】
 ケビンショート、吉田彰、原慶太郎、富田瑞樹、中尾宏
【成果報告】
  四街道市吉岡地区を対象に、地域連携の深化と市民啓発を目的とした四街道吉岡地区の自然・文化に関する情報を調査した。調査から得られた結果をもとに、吉岡地区の環境情報ハンディマップ「日本の自然と伝統文化の探検 四街道のカントリーハイク 吉岡の里山を歩く」を作成した(図2-1)。また、地域連携ならびに市民啓発の一環として、本学教員による自然観察会や公開講座を吉岡地区にて実施した。なお、これらの活動は四街道市吉岡の市民団体「Y・Y・NOWSON」との連携によるものである。
 環境情報ハンディマップ「日本の自然と伝統文化の探検 四街道のカントリーハイク 吉岡の里山を歩く」作成にあたっては、吉岡において確認できる生物や生態系、ならびに、文化物の調査を実施した。調査で得られた結果のうち代表的な対象物を選定したうえで、解説文やイラストとともに環境情報ハンディマップに掲載した。掲載した主要な対象物は次のとおりである。文化物:子の神、朝日神社、福星寺、春日神社、大六天神社、吉岡の庚申様;生物や生態系:雑木林、里山の生物多様性、里山の植物、並木川と周辺の水田で見られる生物。特に、生物と文化の関係性を特徴づける催事などについては、積極的に取り上げて環境情報ハンディマップに掲載した。

 2015年から2016年にかけて計6回の自然観察会と公開講座を実施した。自然観察会においては、環境情報ハンディマップに取り上げた、吉岡地区の生物・文化物の観察に適したルートを通りながら、里山の春の植物や、冬の里山で見られる鳥類、地域の自然と文化の関係性について解説した。自然観察会、公開講座の開催日、テーマ、担当者は次のとおりである。
2015年 5月17日(日):ケビンショートさんと新緑の里山を歩く会、ケビンショート
2015年 9月26日(土):マダカスカルの自然と文化、吉田彰
2015年11月 3日(火):英国の自然と文化~カントリーサイドの魅力~、原慶太郎
2015年11月28日(土):タイの自然と文化~樹木に着目して~、富田瑞樹
2016年 1月31日(日):ケビン・ショート教授と歩く冬の里山、ケビンショート

 東京情報大学プロジェクト研究「プロジェクト四街道」によって、地域の市民団体との連携のもとに地域の自然と文化に関する情報を集約した環境情報ハンディマップを作成することができた。また、自然観察会や公開講座を通して、次の連携活動への足がかりが得られた。

図2-1 プロジェクト四街道で作成した「日本の自然と伝統文化の探検 四街道のカントリーハイク 吉岡の里山を歩く」

③小学生の英語の学びを通じてのコミュニケーション能力向上プログラム作成
【研究組織】
 鈴木 理枝、中尾宏
【成果報告】
 四街道市が進めている外国人観光客の導入施策と英語教育の実施状況について情報収集し、外国人対策の一つとして小学生の英語に対するモチベーションの向上のための教育プログラムを作成した。具体的には四街道市の担当部署や教育関係者との打合せにより児童及び保護者の児童英語教育の必要性について意見交換を行い、「小学生の英語の学びを通じてのコミュニケーション能力向上プログラム」を作成した。また、ネットや専門誌を通して児童英語教育に関する最新情報を調査、PCやタブレット機を活用した教材を試験的に導入し、その有用性を評価した。今後は小学生を対象に研究成果を活用した英語教育を実施し、その有効性の検証、さらなる向上を目指す。

若葉区町丁別人口推計の検証調査

【研究代表者】内田治
【研究分担者】三宅修平

過去に実施された若葉区町丁別人口推計方法の統計学的妥当性の検証を行った。
具体的には、過去に提案された人口推計方法の予測精度を把握して、統計学的に裏付けされた方法(具体的には回帰分析)を用いて、人口推計を行い、過去の方法と比較した。
使用した手法は以下の通りである。
 ①回帰分析法
 ②移動平均法
 ③コーホート法
いずれの方法においても、過去に実施した予測結果と合致するものであり、過去の予測結果の妥当性を検証することができた。
また、上記3つの方法の有用性を同時に検証することができた。
なお、本結果は今後の町づくりに活かしていくという区役所担当者の意向を確認している。
※解析結果の詳細は別途、報告書で提出済み

データのプライバシー保護と利活用技術に関する調査 (医療におけるプライバシー保護データマイニング技術の適用)

【研究代表者】永井保夫
【研究分担者】マッキン ケネスジェームス、花田真樹、鈴木英男、山口崇志

1. 研究目的
本研究では、H29年度の改組にあわせて、総合情報学部が看護学部と連携して研究していくために基盤となる技術を、ITやコンピュータ科学の側面から調査を実施した。

2. 調査内容
医療分野に対しては、常に個人の機密情報を取り扱うために、データを統合したデータベース作成上はプライバシー保護は大きな課題となっている。そこで、プライバシーの保護をおこないつつ、データの保護活用技術の仕組みが不可欠になってくる。
 このようなプライバシーの保護をおこないつつ、その保護利活用技術を把握するために、以下の3つの技術について、書籍、論文雑誌、および学会参加(国際会議、学会研究会、学会総合大会)による調査を実施した。

(1) パーソナルデータの匿名化・秘密計算(暗号化)
医療データでは、常に個人個人の機密情報を扱うために、統合化したデータベースを作成する上で、プライバシーの保護が課題になってきている。そのために、匿名化や暗号化の技術が不可欠である。まず、米国、EU、日本のプライバシー保護制度の現状を調査した。さらに、パーソナルデータの匿名化と暗号化(秘密計算)についても調べた。匿名化は特定の個人が識別されるリスクを低減させるために有効だと考えられており、データをひもといていっても、ある特定の個人にデータが戻らないようにすることを意味している。具体的な手法には、「切り落とし」、「仮名化」、「曖昧化」がある。また、秘密計算はプライバシーを保護するために、匿名化とともに利用されている技術である。複数の参加者がいる場合に、お互いの情報を秘匿したまま演算結果のみを出力する技術の総称であり、「Multi Party Computation」や「Secure Multi-party Computation」などと呼ばれている。このような技術を用いることで、他人に知られたくないパーソナルデータを秘匿した状態で、統計値や解析結果のみを取得することができる。秘密計算には、秘匿回路を用いる手法、秘密分散を用いる手法、準同型暗号を用いる手法がある。

(2) プライバシー保護データマイニング
パーソナルデータ(個人情報)を含む膨大な量のデータを解析する際に、プライバシーを保護しながらマイニング処理をおこなう手法である。これを用いることで、パーソナルデータの活用に関する本人からの同意の取得やセキュリティ管理などの煩雑な作業を軽減できる。プライバシー保護データマイニングの中で、入力データプライバシー保護技術、秘密計算、出力データプライバシー保護技術について調査を実施した。入力プライバシー保護技術は、個人の特定などに結び付く可能性があるデータを加工あるいは削除することで、プライバシー侵害のリスクを低減する技術であり、「匿名化」や「撹乱」という手法がある。秘密計算とは、単体では意味を成さない状態でデータを蓄積し、それを解析した結果のみを表示することで、データの内容を秘匿しながら解析できるようにする技術であり、「暗号化」や「秘密分散」が用いられる。出力データプライバシー保護技術は、解析をおこなうコマンドであるクエリへの応答を制御したり、解析結果にノイズを加えたりすることで、特定の個人の属性が明らかになるリスクを回避する技術である。

(3) データマイニング
医療分野で必要とされるデータマイニングの基本技術(クラスタリング、相関ルール、ニューラルネット、決定木、サポートベクターマシン)についてサーベイを実施した。さらに、医療分野を対象としたデータマイニング技術の適用例についても調査を実施した。

3. まとめ
今年度は、本学の総合情報学部と看護学部が連携して、医療分野に対して、データ中心科学とビッグデータ解析技術を適用することにより、データ駆動の情報サービスを提供・創成していくために必要となる研究や技術動向についての調査に着手した。これらの調査結果にもとづき、パーソナルデータ(広くいうと、必ずしも個人を特定できるとは限らず、個人情報に該当しない可能性のある情報)を取り扱うことができ、ICTを活かした医療分野の具体例への適用を検討していきたい。特に、医療分野に対するデータ駆動の情報サービスを実現するためのプライバシー保護データマイニングの在り方について、さらに検討していく予定である。

KnowとHowの融合によるtuis式実学的プログラミング教育法の研究

【研究代表者】岸本頼紀
【研究分担者】小早川睦貴、山口崇志、布広永示

1.研究概要
 プログラミング教育において,学習者の理解が進まない問題がある。この原因のひとつとして,学習者が教科書で学ぶ知識(know)に加えて,実際にプログラムを作る際のテクニック(how)が修得できていない点を考える。例えば,for文やif文といった文法やアルゴリズムなどの知識は教科書等で学ぶことができるが,字下げによるブロックの明示化や段階的にコンパイル実行をしながら作成していく方法といったプログラム作成時のテクニックについては学ぶ機会が少ない.これらの修得状況やプログラム作成時の特徴が得られれば,効果的なプログラミング学習を実施する一助となると考える。
 本研究では,プログラミング学習者のプログラム作成過程について,動画と注視点のデータを収集し,これに基づく学習者の特徴について調査を行った。

2.調査方法
①被験者10名に対して事前課題として筆記試験を実施し,その結果およびプログラミング経験年数に基づいて被験者のレベルを低中高の3つに分類する。
②被験者に対して,プログラミング作成課題を3題課し,その作業状況について注視点を含む動画として撮影する。
③得られた動画から被験者のレベルに基づくプログラミング作成過程の特徴について分析する。

3.調査環境
PC:デスクトップPC
ディスプレイ:ASUS PB279Q
視点検出器:SteelSeries Sentry Gaming Eye Tracker
開発環境:NetBeans IDE 8.0.2
開発言語:Java

4.結果
本調査により,次の結果が得られた.

5.考察
①知識に関する考察
 Web検索キーワードより,中レベル,高レベルの被験者は文法の確認が多かったが,低レベルでは検索キーワード自身が問題文と同じとなる結果がえられた.また,注目場所についても,レベルが低くなるにつれて,Webページの閲覧時間が増加している。これより,プログラミング能力が低い者はアルゴリズムをイメージできず,アルゴリズムの理解についてもレベルが低い方が時間がかかることがわかった。これにより,知識の差がプログラミング能力の差となっていると考えられる。

②技術に関する考察
 コンパイル実行について作成途中で確認のためにコンパイル実行をしているのは中レベルの者だけだった。これは,高レベルの者は正しくプログラムを作成できるために途中実行を省略しており,中レベルの者は途中での確認作業を行っていると考えられる。また,低レベルの者は途中で確認するという技術が身についていないため,全体を作って確認修正をするという状況となっていることが確認できた。また,ブロックの終端記号確認は,中レベルは途中で行っているが,低レベルではエラーが出てから確認を行っている。これより,低レベルの者はブロックの概念を理解できていないことが考えられる。
 これらより,プログラミングのレベルとプログラム作成時の技術修得状況にも関係があると考えられる。

6.結論
 プログラミング学習者の特徴について,レベルに基づく知識と技術の傾向について調査した結果,本例においてはプログラミング能力は知識と技術の両方を必要とすることが確認できた。

7.今後の課題
 今後の課題として,より詳細な調査によるプログラミング能力に関連する知識や技術を得て,これを体系的に学ぶことのできる学習モデルについて検討する必要があると考える。

8.対外発表
本研究は,「中根 翔・岸本頼紀・中薗友樹・大森明依, プログラミング能力の違いによるプログラム作成過程の特徴分析の一考察, 電子情報通信学会2016総合大会」として公表されている。